2009年3月17日火曜日

ペインキラー





ニューヨークでのこと、ドラッグストアのレジの横にのど飴があった。
空気が乾燥しているニューヨークの冬はキツい。ノドが一発でヤラレル。これ幸いとそののど飴を買った。

なめはじめてから30秒後、なんかへんな感覚になった。鼻の下から首のまわり全部、何も感じなくなっていた。皮膚を触ってもわからない。口を開けているのか締めているのかもわからない。あごを動かしてみても、動かした感がない....!
な、なんじゃこれはーーーーっ!
でも一番の目的であったノドの痛さが治った。え?いや、これはノドの痛さが「治った」のではなく、痛さを「なにも感じなくなった」だけだ。
これって、治ったって事?

アメリカ人は薬の事を「ペインキラー」と呼ぶ。直訳すると「痛みの殺し屋」つまり痛み止め。
「道を歩いているアメリカ人に聞いてごらん『アスピリンもってる?』て。そうすると、間違いなく全員もっているよ」
と、英会話のアメリカ人のおばちゃんは言った。彼女は授業が調子に乗ってくると、キッチンでアスピリンを飲む。

朝、ニューヨーカーたちは、でかいプラスティックのコップに、なみなみと入れてもらった濃い濃いスタバのコーヒーを片手に、さっそうと仕事場に向かう。一見、「おうおう。ニューヨーカーは目覚ましにあんなにいっぱいコーヒーを飲むのか。さぞかしすばらしい仕事をこなすんだろうなあ」と見える。
じつはあれ、頭痛薬なのだ。みんなコーヒーが頭痛を和らげてくれると信じている。結構頭痛持ちが多い。だから彼らにはかかせない。

「年がいってくると、朝起きると体中が痛いのよ」おばちゃんはいう。年がいくとは、その痛みと戦う事になるのだと。
だから「ペインキラー」はかかせない。一生必要になってくる。

となると、冒頭ののど飴の理由がわかる。要するに、それは日常茶飯事なのだ。日常茶飯事にモルヒネ(?)麻薬(?)麻酔(?)のようなもので、感じなくさせているだけなのだ。それで治ったことになっているのだ。
でもさー。それってホントに治っているの?からだが痛くなったり、喉が痛くなったり、頭が痛くなったりするには、それなりの理由ってえもんがあるでしょ。それをあなた、一把ひとからげに「感じなくさせちゃって」ハイ終わり?

と思っちゃうのは私が日本人だから?

なんか西洋の治療のしかたって、「痛い箇所をとる」とか「痛いものを無くす」とかそういう発想で来ている気がする。ガンが出来たら取る。ウイルスがいたら消す。でもガンもウイルスもなんかの理由があってそこに存在しちゃったわけで、その理由を知る事から始まるんじゃないのか?人間のからだってすごいバランスで動いている気がするんだけどなあ...。
それを「ほら!がんが見つかった。それ!とれ!」とか
「おおっ!ウイルスだぜ!殺してしまえ!」と、単純にやっつけたり、切り取っちゃったりするだけでいいの?なんかモノ扱いだよなあ。人間のからだは、金属で出来ている機械じゃないんだから。
それにそんなことしたら、またどっかで出てくるかもしれないじゃない。そうすると「転移だ」とか言って、また殺しちゃう?いたちごっこじゃないの。でもそうしているうちにどんどんからだはバランスを崩していかないの?

この発想は、「お、テロだ!やっつけてしまえ」といって、よその国に行って「テロだテロだ」と殺しに行く発想と似てないか?
私としては、テロをやる人はテロをやるなりに何かしらの理由があってやりにくるんではないかと思ってしまう。それはその国がどこかおかしな事をしていたり、国と言うからだが変調を来しているから、現われてくるのじゃないだろうか。たとえばよその国にへんな事をしていない国が、テロで狙われたりするだろうか。なにかしら恨みを買うような事をやってしまったからではないのか?

そこんところを考えないで、「悪いものが来たら殺す」という考えでは、いつまでたってもからだは治らないし、国も平和にはなれない気がするなあ。

などと、のど飴からテロにまで飛んでしまったお話でした。ちゃんちゃん。

追伸:あのあとすぐのど飴を吐き出したが、丸々2時間、私の口とノドは存在していなかった。めちゃくちゃおっかなかった。
で、そのスリルがおもしろくって日本に戻った時、友達に「はい、お土産」とのど飴あげたのに、誰もなめてくれなかった。

絵:お口直しに、椿の絵 けんぽ表紙

4 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

怖いのど飴ですね。
薬は気づきませんでしたが、海外いくと、「日本の人は健康的な食事してるな」と思っちゃいます。新鮮で種類も豊富で恵まれているな~と改めて。
余計なものは切るではなくて、共存していこうとする日本人(アジア人?)のメンタリティって、素晴らしい財産だと思います。平和憲法もあるし、こういういいところをアピールして世界に尊敬されるような国になっていったらいいのにな。

匿名 さんのコメント...

面白そうですな。
確かに誰かになめさせてみたい。

で、アスピリンの話では、昔、飛行機内やら米軍だかでアスピリンを出された患者が「もっと効く薬無いか。」ときいたら、倍量出された。って話を読んだことあります。

つくし さんのコメント...

リスさんありがとう。

そうなんです。海外いくと、日本人の健康的な食事が見えて来て、うれしくなっちゃいます。平和憲法もそうだし、いいとこいっぱいあるのに、なんでか、日本人自身が「だめだー、だめだー」って、自己嫌悪している。
私も自己嫌悪菌に侵されているので、人のこと言えないのですが、もちょっと自国を褒めたらいいのにね。

つくし さんのコメント...

まいううーばばさま

へへへ、誰かになめさせたいってとこがおかしい。
自分でなめてみたいとは言わない(笑)。

そのアスピリンの話、おかしー。さもありなん。
前に日本人の友達のアメリカ人彼氏が、自分のママにも「アイラブユー」を連発するので、嫉妬して怒ったら、
「ハニー、ママには10回しか言わないけど、君には100回言うよ!」といったらしい。
アスピリンの量の話を聞いて思い出した。

どうも、量の問題らしいですな。(ち、ちがうだろ!)